映画『ブレードランナー』の中で、ハリソン・フォードが変わった機械を使っていた。
ポラロイドカメラで撮影した写真を、テレビの上に取り付けた機械の口に滑り込ませるのだ。
それがスキャナーなのである。
スコッチをちびちび呑みながら、その機械に話し掛ける。何番を拡大しろ。声に応えて、写真のデータが拡大される。するとそこに映っていたのは。。。という展開。
レトロ・フューチャーだなぁと、当時から思っていた。なんでわざわざ音声で操作するのだと。
今回、google homeが販売された。
日本語にもしっかり対応している。
ニュースのヘッドラインや天気予報の読み上げ、リマインダーの登録、NETFLIXの再生など、多岐に亘るサービスを実現する。いわばデジタルな執事ではないか。
siriやgoogle assistantを使ってみて感じることは、ただただ驚きである。
あんなに日本人が密かに感じていた、自国の言語の難解さと、外国資本には掌握できないだろうという自負は、いとも簡単に潰える。
明日、六時に起こして。ケチャップを買うとメモ。
そんなに滑舌がヒドくなければ、恐らく簡単に入力できるだろう。
アメリカに比べ、日本人は音声入力に抵抗を感じるようだが、いずれは利便性が優先されていくに違いない。
バック・トゥ・ザ・フューチャー2に出てくる、フォバーボートはいまだに実用化されていない。ナイキの自動リサイズシューズも、開発は告知されたが、完成がまだである。
しかしグリフが逮捕された瞬間、ドローンとおぼしきカメラが彼を撮影する。
ドローンは技術的に可能になったが、フォバーボートや自動リサイズシューズはまだまだ開発途中なのだ。
それに比べると、音声でスキャンした画像を拡大するなど、造作もないことではないか。
マニアやオタクと呼ばれる人たちが、高いスキルを持って、色んなものを開発するというのは、日経寄りな、むしろ軽薄な見方である。
彼らは決して、娑婆のビジネスマンのように、生産性を信じていない。
オープンソースのイベントで、古いLibrettoをわざわざ、ラズパイで動かしてみたとか、音声で下書きのブログ記事を更新してみた、みたいなことを見たことがある。
効率など関係ない。面白いかどうか、趣向が凝らしてあるか、である。
写真をスキャンして、拡大表示するのなら、安いスキャナーと画像編集ソフトで十分である。
だが、それをわざわざ音声で操作する。
ブレードランナーは特にマニアに崇拝されている作品である(攻殻機動隊やマトリックスなど、後世の作品世界に多大な影響をあたえている)。
きっとアメリカのマニアが、google honeとスキャナーを組み合わせて、youtubeで公開するに違いない。
そしてそれを作った経緯をどや顔で説明するのだ。
ああ、うらやましい。