『羊たちの沈黙』はサイコホラーとという言葉を知らしめた作品であった。
その続編も、三作目も評価は分かれるだろう。だいぶ、マニアを厳選したきらいがある。
この犯人のハンニバル・レクターの前半生を題材にしたという、ドラマ『ハンニバル』が日本でも、ケーブルテレビで放映された。
そして、3stシーズンで終了となった。乾杯!
1stシーズンは面白かった。
主人公のウィルが警察に協力して、殺人現場に到着すると、トリップして犯人になりきる。
そこで犯行現場を正確に分析し、どういう人物であるか、たちまち見破ってしまう。
しかし、その特殊な能力ゆえに、現実との境界が危うくなり、レクター博士に陥れられる。
というのが、1stシーズンのクライマックス。演出といい、展開といい、行き着く暇もなく、見応えがあった。
ところが、である。
そこから2stシーズンは、見事に急ブレーキで失速していく。
逮捕されたウィルと、レクター博士の確執やら、次から次に、飽きるほど猟奇的な犯罪が起こる。いや、実際、そればかりの繰り返しなので、びっくりするぐらいの速度で飽きる。
見ていて、いろんな感情が芽生えるのではなく、ウィルと同様、どんどん酩酊していくような気分でいると、思わせぶりな終わり方で、番組が終わる。うっかり、見過ごしても大して気にならない。いや、もう見なくても気にならなくなる。
ズームやスローや、特殊技術で、美しい自然を堪能できる映像美はある。
しかし、それ以外に見所は実は少ない。
一話完結ではないから、だらだらと駆け引きが続いて、何の話だったかわからなくなるし、大した展開でもないのに過剰な大音量の繰り返しは茶番である。
『ブレイキング・バッド』のスピンオフとして、Netflixで配信された『ベター・コール・ソウル』はオリジナルの前エピソードという設定。
だから、ちゃんと2000年代のフィーチャーフォンと、固定電話がメインである。タブレット端末は存在しない世界という、世界観を大事にしている。
『ジ・アメリカンズ』も冷戦末期を舞台にしているから、ちゃんと当時の衣装や、ヘアスタイルをモチーフにしている。
その点、『ハンニバル』は2013年を舞台にして、過去のハンニバル・レクターを描こうとするなど、設定が雑。
つまり、例のアレだ。
『羊たち〜』で、あんなに衝撃的な猟奇的殺人が、続編を追うごとに単調になり、眠気を誘って過剰な効果音に頼らないといけなくなる、アレと同じである。
ダメだ、こりゃ感が満載の作品なので、3stシリーズまでよくもったものであると、逆に新鮮である。
もっと面白いのに、1stシーズンだけで、終わる(『ビリーブ』とか『マインド・ゲーム』とか)ものがあるというのに、あの単調で、気取ったレクター博士をぼんやり眺めるだけで、3stシーズンまで続くのか。
まあ、終わったんだから、いいか。良かった良かった。配信しているところには悪いけど、おもんなかった。
かつての映画のヒット作のリメイクものとしては、ワースト第一位といえるだろう。(ちなみに二位は『ラッシュ・アワー』、三位はマギー・Qの胸の谷間以外に見所がない『ニキータ』だと思う)
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