あこがれのダークピット
電車に乗っていると、読書している人が何を読んでいるのか、気になる。
自分が読みかけを持っていない時などは、それが顕著になる。
環状線に乗ったときに、向かいで年配の男性がカッスラーのダークピット・シリーズを夢中になって読んでいた。いいなぁ。
それに触発されて、自分もいちびって、87分署を新書版で買ったこともあった。
小学生が地下鉄で、坊ちゃんを読んでいた。うわ、俺なんか、君の頃は、俺コロコロコミックで、ドラえもん読んでたハズ。後生おそるべし。
スマホでおっちゃんがソリティアやリバーシをしていようが、ねぇさんが画面いっぱいのスタンプでラインをしていようが、どうでもいいが、本だけは気になる。
ワゴン売りしていた筑摩の選書で、キェルケゴールを買って、予想以上に難解であることに驚いた。
しかし元々一般向け。というか、学生向けのシリーズであったという。ああ、昔の学生さんは頭良かったんやね。いい年こいた、社会人がこんなことで戸惑ってたら、恥ずかしい。昔学生やった人に嗤われるのではないか。
そう思いながら、電車で読んでいると、下車直前に隣のおっさんが感心していう。
「若いのに、難しいの読むねんな」
勘弁したれや。
カバーがはずせない本
別の日に、電車に乗った時のこと。文庫本を熱心に読むふける、初老の男性。混雑で文面は見えなかったが、非常に熱心に読んでいらっしゃる。
好みとはいえ、そこまで熱心というのも、よほど面白いのだろう。一心不乱にページをめくっていらっしゃる。うらやましい。かつて幸田露伴は高齢にも構わず、新しい知識に飢えて読みふけっていたという。
それだけの知識が、個人の死没ととも、地上から無くなるということに、周囲は嘆息した。
人間の宿命である。
そんなことをふと考えながら、ふと顔を上げたはずみに、電車が揺れる。彼の肩越しに本文が覗けた。
「いや、はずかしいわ」とか、"乳房"とか、"濡れ"とか。。。
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