2014年12月9日火曜日

忠臣蔵とGHQ

討ち入りという復讐

戦後、二年近くは歌舞伎仮名手本忠臣蔵の上演が禁止されていた。

 封建制の道徳を美化したものであり、民主化に反するものだというのが、その理由。

 おもしろいのは、子母澤寛の『勝海舟』も戦中から、連載していたが、戦闘員たる武士を主人公にしているから、連載NGになった。ところが、

「これは江戸城無血開城をテーマにした、平和への願いをこめた作品だ」

 と主張して、連載を継続させたという。

 しかるに、忠臣蔵は赤穂城を明け渡したが、それはいわば復讐劇の始まり。どんなに見張られても、姿を隠し、あるいは山科で大石は道楽者を演じる。

 そうした経済的な放埓はうわべだけで、本心では本懐を遂げるべく、臥薪嘗胆して同志と密かに計画を立てる。

 ううん、日本側からすれば盛り上がるプロットだが、占領する側からすれば、こんな物騒な話題はない。(進駐軍とかいっているが、英語表記はOccupation Forces=占領軍。平和をもたらすために、進軍してきた軍というのは、日本製の思い込み)

 まるでポツダム宣言の受諾が、赤穂城の開城のようになってしまう。そして反撃することが、正しいことになってしまう。ううん、やめてくる?

 というのが、本当は背景にあったのではないだろうか。

RONIN

ところが皮肉にも、2013年にキアヌ・リーブス主演で『47ronin』が公開された。興行的にはアイタタな結果であったが、相当彼らも忠臣蔵は好き。ロバート・デ・ニーロとジャン・レノが競演した『RONIN』でも、そのフィギュアをはさんで復讐劇としてのロマンをやたら語っていた。

 魅力や捕らえ方は様々だろう。

 一つだけはっきりしているのは、織田信長や坂本竜馬がタイムスリップして、山本五十六と一緒に連合艦隊に乗り込むとかいう、トンデモフィクションはあった。しかし大石内蔵助は決して、タイムスリップしないのだ。

 なぜか? 潜伏したり、情報収集したり、作戦立案をプロデュースする能力は、見事だと思っていいのに。

 やはり元禄という、結構バブリーな(農村の可処分所得が飛躍的に倍増した)時代にあって、臥薪嘗胆するという、ストイックな姿がカッコいいのではないだろうか。

 逆境にあっても、信念に殉じるヒーロー。いってしまえば、定石すぎるが。GHQの懸念はどこへやら。しっかり、お話として楽しむのだ。

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