失われた世界
ドイルにとって、ホームズ作品はいわば規格外のコンセプトであった。
メインはロマン派の伝統を継ぐ、歴史小説を書くことであった。
だから、『緋色の研究』や『四つの署名』 など、初期のホームズものには歴史事件を題材にしたものが多い。(日本で、しばしば埋蔵金などの歴史ミステリは、このドイルの形式が原型である)
そうした中で、冒険に特化した作品『失われた世界』は、冒険小説の嚆矢だろう。
チャレンジャー教授が発見したという、恐竜が生存しているというアフリカの秘境に行くというストーリー。
映画化も何度もし、タイトルはスピルバーク作品の原型になった。
主人公の新聞記者は、チャレンジャー教授に最初に取材にいくのをびびるが、恋人につまらない男だといわれて、一念奮起して出かける。
そこでチャレンジャー教授の探検隊に参加して、功名を立てようと志すのだ。荒唐無稽な設定だが、古典的な冒険要素はぶれていない。
そして冒険のすえに、ロンドンに帰ってくるが、恋人は別人と婚約していた。相手は銀行員であるという。
野心と、功名心とは、かけ離れた、安定収入と将来設計が魅力の優しい人だから、結婚を決めたと。
何のための冒険やったの。。。というオチ。結局続編を匂わせるような終わり方で、ホームズほどのファンはつかなかったらしい。
しかし注目すべきは、銀行員に対する見方であろう。冒険する銀行員。ばかな。損益分岐点を見極められるのが、本分であって、原住民とともにジャングルを分け入るスキルなど必要ない。
冒険者と銀行員は、相容れない職業なのだ。
そしてドイルが描こうとしたのは、産業革命以降の、経済社会によって『失われた世界』であったのだ。
銀行員ヒーロー
90年代の高杉良原作で映画化された『呪縛』。
金融業界の裏をえぐりとったとかなんとか、騒々しいキャッチの割りに、仲代達矢と役所広司の師弟対決以外、大して見るものもなかった。
その点では、去年の倍返しする人のほうが話題にはなっただろう。
復讐。愛憎。トラップ。ドラマの基本要素をとりながら、何か物足りないと思っていた。
何が足りないのか。失われているのか。
そう思って、気がついた。そうか。自分はチャレンジャー教授の側だったのだと。
願わくば、功名心に今頃になって、取り付かれないことを。いまさらながら。w
恐竜のおもしろ写真を探してたが、 クトゥルーみたいなアンモナイトのインパクト以上のものはなかった。 |
0 件のコメント:
コメントを投稿