2015年3月15日日曜日

探検家の失恋

失われた世界

ドイルにとって、ホームズ作品はいわば規格外のコンセプトであった。

メインはロマン派の伝統を継ぐ、歴史小説を書くことであった。

だから、『緋色の研究』や『四つの署名』 など、初期のホームズものには歴史事件を題材にしたものが多い。(日本で、しばしば埋蔵金などの歴史ミステリは、このドイルの形式が原型である)

そうした中で、冒険に特化した作品『失われた世界』は、冒険小説の嚆矢だろう。

チャレンジャー教授が発見したという、恐竜が生存しているというアフリカの秘境に行くというストーリー。

映画化も何度もし、タイトルはスピルバーク作品の原型になった。

主人公の新聞記者は、チャレンジャー教授に最初に取材にいくのをびびるが、恋人につまらない男だといわれて、一念奮起して出かける。

そこでチャレンジャー教授の探検隊に参加して、功名を立てようと志すのだ。荒唐無稽な設定だが、古典的な冒険要素はぶれていない。

そして冒険のすえに、ロンドンに帰ってくるが、恋人は別人と婚約していた。相手は銀行員であるという。

野心と、功名心とは、かけ離れた、安定収入と将来設計が魅力の優しい人だから、結婚を決めたと。

何のための冒険やったの。。。というオチ。結局続編を匂わせるような終わり方で、ホームズほどのファンはつかなかったらしい。

しかし注目すべきは、銀行員に対する見方であろう。冒険する銀行員。ばかな。損益分岐点を見極められるのが、本分であって、原住民とともにジャングルを分け入るスキルなど必要ない。

冒険者と銀行員は、相容れない職業なのだ。

そしてドイルが描こうとしたのは、産業革命以降の、経済社会によって『失われた世界』であったのだ。

銀行員ヒーロー


90年代の高杉良原作で映画化された『呪縛』。

金融業界の裏をえぐりとったとかなんとか、騒々しいキャッチの割りに、仲代達矢と役所広司の師弟対決以外、大して見るものもなかった。

その点では、去年の倍返しする人のほうが話題にはなっただろう。

復讐。愛憎。トラップ。ドラマの基本要素をとりながら、何か物足りないと思っていた。

何が足りないのか。失われているのか。

そう思って、気がついた。そうか。自分はチャレンジャー教授の側だったのだと。

願わくば、功名心に今頃になって、取り付かれないことを。いまさらながら。w

恐竜のおもしろ写真を探してたが、
クトゥルーみたいなアンモナイトのインパクト以上のものはなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿