2015年2月5日木曜日

ルパンから盗む

五右衛門を知るルパン

 士は己を知る者のために死す。史記の中でも、一番カッコいいフレーズではないか。

 ルパン三世のエピソードの中で、ルパンが五右衛門に計画を説明するシーンがある。

 次元が撃った仕掛けが作動し、エレベータが高速で動く。中にいるルパンを助けるには、五右衛門が一瞬でエレベータをつり上げるワイヤーを一閃しないといけないとかいう場面。

 他でもない、それができるのは、五右衛門。お前しかいない。

 ルパンにそう口説かれて、五右衛門が挑むという話。

 はっきりいって、ルパンのリーダーシップは皆無である。苦労して手伝ったのに、彼が土壇場で不二子の色気に惑わされて台無しにしてしまうし、うっかりして銭形警部に追いかけられる羽目にもなる。上司として絶対一緒に働きたくないタイプである。

 だが、犯罪に関する見識は豊かであり、何より次元と五右衛門のスキルを理解している。そこに絶対的な信頼を置き、反面で怠慢を容赦なく見透かす。

 次元も、五右衛門も、彼に知られてしまった以上、ルパンのために二人は命をかけたくなってしまうのだ。

職人の気質

 箔押しを自営で営む、年配の職人さんの話を今でも記憶している。

 商品のパッケージに、金や銀の箔を押すのだが、大阪と東京とでは、昔の職人の気質が違うという。研修会として、東西の職人が交流した時のこと。

 東京の職人は美学に凝るという。誰でもできる仕事はやりたがらない。同業者がおっと驚く、粋な仕上がりにこだわるという。

 反面、大阪の職人は納期と仕上がりにこだわるという。ちょっと無理なスペックをいかに創意工夫してクリアして、納期に数量を間に合わせるのか。納品できることに面子を感じるのだ。

「他にお願いすることもできず、難題と承知の上で、無理を押してお願いに上がりました」

 こう前置きに詫びると、職人は大体、気を良くして最後まで話を聞いてくれる。クライアントとしての初歩作法である。

 次元や五右衛門の気持ちも分かるが、彼らを動かす時の気持ちも、分からないではない。

 いわばルパン作戦だろうか。彼が史記を読んでいたのだとしたら、似合わぬ古風な趣味というべきではないか。

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