怖い話にうなされて
怖い動画を夏場に見てしまった。葬儀場での怖い打ち明け話を、画面に表示させるものだった。
悪いことに夜見てしまった。就寝前である。見事にうなされた。
夢うつつになって、身もだえしながら、考えた。反作用を使うのだと。
チベットの瞑想の中で、意識がふさぎこんだときは、頭上に金色の釈尊像を乗せる観想を行い、気持ちを明るくするという。眠たいときにコーヒーを。落ち着きたいときにホットミルクを、である。
その反作用を考えた。
子猫くん泣き虫卒業
子猫くんはもうすぐ一歳。もう自分で体を全部なめるし、ご飯もしっかり食べています。
その日もいっぱい食べて、眠たくなったので、いつものようにママと一緒にお昼寝をしていました。
ところが目が覚めてびっくり。
さっきまで一緒に寝ていたママがいないのです。ママと一緒に寝ていたふかふかのお布団に、子猫くんだけが、独りだけで取り残されてしまったのです。
右を見ても、左を見ても、やっぱりママがいません。いつもなら、起こしてくれるママがいないのです。
「ママ?」
子猫くん小さな声で鳴きました。
「どこにいったの? ママ?」
ママに限って、意地悪に隠れん坊をしたりはしません。どこかにママだけ連れ去られていってしまったのでしょうか? ママだけ、追いかけられて、逃げてしまったのでしょうか?
子猫くんはだんだん寒くなってきました。どんどん怖くなってきました。
でも、ぐっと我慢です。子猫くんは、ママが言っていたことを思いだしたのです。
(独りになっても、絶対、鳴き声をたててはいけませんよ。悪い野良犬や、大きなカラスがやってきて、子猫を食べてしまうからね)
野良犬はどんなに乱暴なんでしょう。カラスはどんなに怖いんでしょう。子猫くんはますます怖くなってきました。ぶるぶる震えてきました。
「ママ? どうしていなくなったの?」
野良犬が牙をむいて襲いかかってくるかもしれません。カラスがくちばしで、突き刺してくるかもしれません。
もう、涙がぼろり。右の目にも、左の目にも、おおつぶ一粒、あふれて、今にもこぼれそうです。
ママァ。
すると、そのときです。
「子猫、もうおきてたの?」
なんと、いつものように、ママが目の前に立っていました。
子猫くんはうれしくて、ママの足に抱きつきました。何回も、何回も、匂いをかぎました。間違いありません。ママの匂いです。
「あのね、ママ。ぼく泣かなかったよ」
「偉いわね、子猫」
「もう大きくなったからね」
「大きくなったものね、子猫」
「でも、ママとは、ずっと一緒だよ」
「はいはい、ずっと一緒ですよ」
「ぜったい、ぜったい、ぜったいに、一緒だからね」
「はいはい、ぜったい、ぜったいに、一緒ですよ」
ママのお腹にもぐりこんで、子猫くんも丸くなりました。ふかふかのママのお腹に包まれて、子猫くんはぽかぽか。すぐに眠たくなってきました。涙のあとも、もうなめてありません。
「ママ、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
子猫くん、ママが帰ってきて、よかったね。おやすみなさい。
反作用の効果
という話を考えて、絵本をイメージした。水彩画がやはりいいなとか、子猫はどんな柄なのだろうか、とか。
一番ラストを繰り返して、やっと眠りにつけた。夜に怖いものは、やはり体に良くない。夏でも、冬でも、うっかりみてしまうと、後がしんどい。
そして、我ながら、小心者である。
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