2014年11月26日水曜日

泣き虫卒業

怖い話にうなされて


 怖い動画を夏場に見てしまった。葬儀場での怖い打ち明け話を、画面に表示させるものだった。

 悪いことに夜見てしまった。就寝前である。見事にうなされた。

 夢うつつになって、身もだえしながら、考えた。反作用を使うのだと。

 チベットの瞑想の中で、意識がふさぎこんだときは、頭上に金色の釈尊像を乗せる観想を行い、気持ちを明るくするという。眠たいときにコーヒーを。落ち着きたいときにホットミルクを、である。

 その反作用を考えた。

子猫くん泣き虫卒業


 子猫くんはもうすぐ一歳。もう自分で体を全部なめるし、ご飯もしっかり食べています。

 その日もいっぱい食べて、眠たくなったので、いつものようにママと一緒にお昼寝をしていました。

 ところが目が覚めてびっくり。

 さっきまで一緒に寝ていたママがいないのです。ママと一緒に寝ていたふかふかのお布団に、子猫くんだけが、独りだけで取り残されてしまったのです。

 右を見ても、左を見ても、やっぱりママがいません。いつもなら、起こしてくれるママがいないのです。

「ママ?」

 子猫くん小さな声で鳴きました。

「どこにいったの? ママ?」

 ママに限って、意地悪に隠れん坊をしたりはしません。どこかにママだけ連れ去られていってしまったのでしょうか? ママだけ、追いかけられて、逃げてしまったのでしょうか?

 子猫くんはだんだん寒くなってきました。どんどん怖くなってきました。

 でも、ぐっと我慢です。子猫くんは、ママが言っていたことを思いだしたのです。

(独りになっても、絶対、鳴き声をたててはいけませんよ。悪い野良犬や、大きなカラスがやってきて、子猫を食べてしまうからね)

 野良犬はどんなに乱暴なんでしょう。カラスはどんなに怖いんでしょう。子猫くんはますます怖くなってきました。ぶるぶる震えてきました。

「ママ? どうしていなくなったの?」

 野良犬が牙をむいて襲いかかってくるかもしれません。カラスがくちばしで、突き刺してくるかもしれません。

 もう、涙がぼろり。右の目にも、左の目にも、おおつぶ一粒、あふれて、今にもこぼれそうです。

 ママァ。

 すると、そのときです。

「子猫、もうおきてたの?」

 なんと、いつものように、ママが目の前に立っていました。

 子猫くんはうれしくて、ママの足に抱きつきました。何回も、何回も、匂いをかぎました。間違いありません。ママの匂いです。

「あのね、ママ。ぼく泣かなかったよ」

「偉いわね、子猫」

「もう大きくなったからね」

「大きくなったものね、子猫」

「でも、ママとは、ずっと一緒だよ」

「はいはい、ずっと一緒ですよ」

「ぜったい、ぜったい、ぜったいに、一緒だからね」

「はいはい、ぜったい、ぜったいに、一緒ですよ」

 ママのお腹にもぐりこんで、子猫くんも丸くなりました。ふかふかのママのお腹に包まれて、子猫くんはぽかぽか。すぐに眠たくなってきました。涙のあとも、もうなめてありません。

「ママ、おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

 子猫くん、ママが帰ってきて、よかったね。おやすみなさい。

反作用の効果


 という話を考えて、絵本をイメージした。水彩画がやはりいいなとか、子猫はどんな柄なのだろうか、とか。

 一番ラストを繰り返して、やっと眠りにつけた。夜に怖いものは、やはり体に良くない。夏でも、冬でも、うっかりみてしまうと、後がしんどい。

 そして、我ながら、小心者である。

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