2014年11月22日土曜日

絡まれた話

地下鉄に現れた人

手違いがあって、急遽、休日に出勤しないといけなくなったときのこと。

 急いで地下鉄に乗るが、そこで絡まれた。

 向こうの車両から、結構な勢いで入ってきた男性が、目前に立つと、行く手を阻む。彼は背後を指し示し、こう言った。

「こっちの座席に座ろうとしたんですか。邪魔して、すいません」

 休日であったので、ほかにも座席はある。相手の気迫に圧倒されかけたが、首を振って脇の座席に座る。

 しかし彼はそれが気に入らなかったのだろう。なおも食いついてくる。

「お前なんか、向こうの車両にいってしまえって、怒鳴ってください」

 はあぁ? 怒鳴られたいのか? ドMな人なのか?

 そういう傾向の人だったとしても、それは対価を支払うことで、構ってもらえるところにいくべきなのではないか。

「早く、お前なんか、出て行けって怒鳴ってください」

 かなりな大声である。ちょっとイラッとした。イラッとしたから、怒りに任せて応えた。

「もう少し、小さな声でも充分聞こえますよ。どうぞ、向こうの車両も空いているので、お使いになったら、いかがですか?」

 ドSを期待して絡んできたなら、馬鹿丁寧で、優しく、穏やかに話しかけてやる。

 彼はもどかしそうに首を振った。

「この車両から、出ていけって、いってください」

 気持ち悪!!

がっかりマン

どうやら怒鳴りつけられたかったのだろう。こうなればと、決意した。超ジェントル作戦である。

「ほかのお客さんも、驚くので、もう少し声を下げていただけませんか? どうぞ、お好きなお席をお使いになってください」

 しばしば、轟音を立てて、バイクを走らせる若いのがいてる。自分は若い頃から、あの手に連中が嫌いだった。

 大人が舗装した道路を、親からもらった金で買ったバイクを乗り回し、税金以上の働きをしている警察官たちをからかって、アウトロー気取り。その美意識と、構ってちゃん加減は失笑ものである。

 田舎で暴走族を見たことがあるが、警察に放っておかれた無様さは、むしろ痛ましかった。これぞ、ヤンキーがモテる環境の、ザ・いなかもんではないか。

 警察に追われることを求めているのなら、本来はそれをしないべきである。暴力に訴える輩がいれば、暴力を振るうような現場を演出して、刑事法で戦うべきである。

 決して同じ文脈で戦わない。目には目ではない。目には歯をだ。

 電車は次の駅に到着する。彼は業を煮やしたのか、ホームに降り立つと、こう言ってきた。

「もう二度と、お前はこの線を使うなって、こうやって、通せんぼうしてください!」

 彼の言葉を正確に聞き取り、答えることにした。

「扉が閉まりますので、足元に気をつけてくださいね。もう少し下がっていただけますか?」

 それでも何か言いたそうにしたが、やがてあきらめたのか、彼が下がり、扉が閉まる。にらみつけてくる彼に、笑顔で会釈しながら、出口を示した。

「お気をつけてお帰りください」

 がっかりさせたった。と思ったが、逆にそれはこれはこれで、加虐的であったのか。そう思うと、背筋がちょっと寒くなった。

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