ジンクス
蛇が来るから、夜に口笛を吹いてはいけないと注意されたことがある。それが怖いからではない。東京コミックショーのレッドスネーク・カモンみたいで、ばかばかしくて止めた。
しばしば、こうしたジンクスを聞くことがある。
曰く、夜に爪を切ると親の死に目に会えない。
(夜間の照明が現代のように整備されていない時代、深爪することが多かった)
曰く、雷がなっている時に腹巻をしなかったり、腹部を温めていないと、へそを取られる。
(雨が降ったあと、水分の気化熱のために、夜明け前に特に気温が低下し、体温を冷やしやすい)
親の死に目に会えなかった確率や、哺乳類であることを照明できなくなる確率など、多分計測することはできない。しかし雷さんに仮託したメッセージは、ちゃんと意味がある。
だが、口笛はなんだ? 夜に口笛を吹くと、どうなるのか? 泥棒の合図だとも聞かされたが、ますます訳が分からなかった。
人が休んでいる民家にわざわざ入るなんて、リスク高すぎだろ。夜間なら事務所へ、昼間なら住宅地へ、ではないのか。
忍者の秘伝書『萬川集海』だと、忍び込んだ形跡すら残さないのが上の忍者。忍び込んだ形跡は残したが、見つからないのが中の忍者。忍び込んだのがバレた上に、捕まるのが下の忍者なのだという。
見つかるリスクをおかすのは、泥棒ではない。強盗である。障害や殺人のリスクに見合うだけの、お金がありそうかどうか、門構えで分かるだろう。
蛇がくる。泥棒の合図。
どうもメッセージが見えてこない。タブーであることはわかるが、何を意味しているのか。
呪術
地蔵菩薩の真言(マントラ=仏に通じる聖なる言葉)は、おんかかかびさんまえいそわか。サンスクリット語で「ははは、希有なるお方よ」という意味。(本来、翻訳することに意味はないと言われている)
「かかか」は”hahaha"を音写したもの。そう。実は笑い声を指している。輪廻で迷っていても、地蔵菩薩に任せておけよ、はっはっはっ。よだれかけしてるようで、結構豪快なのだ。
これが後期密教になると、結構過激になる。
アラーを思わせる神や、ヒンドゥの神々を呪い殺すという、激しい仏が登場してくるが、その真言にしばしば「バット」という音が入る。首を切り落とした音を意味するらしい。
擬態語が盛り込まれるのは、呪術文化の基本のようである。
問題の口笛。
現代でこそ、呪術は実効性は否定されており、直接的な殺害行為とはならない。
殺意の代償行為にしかすぎず、刑事法では裁かれない。本人に知られれば、恐喝になるが、それでは呪いとして、倍返しを喰らうことになる。(戦前までは準・殺人として裁かれていた)
そうした中で、呪い殺す呪術に動物の声帯模写を行っていたという。
鳴き声を真似て、動物の邪霊を召喚し、相手を呪っていたのだ。動物モノマネ(声帯模写とすら、今や言わない)などと、呑気なネーミングの江戸屋小猫さんだが、彼の芸のルーツは呪術師であったのだ。
その一つに風の音を真似て、相手が病気になることを願うのが、口笛であったという。つまり呪いだったのだ。
そう思った。
しかしどうだろう。
地蔵菩薩の真言は安心せよと説いているのに、そんなに広く人口に膾炙していない。信心深い祖母がいなければ、疎遠なものだろう。
逆に夜に口笛をふくことをタブー視する人は、どれだけいるだろう。圧倒的に多数ではないだろうか。
つまり地蔵菩薩の救済より、口笛による呪いの方が、実は高い確率で当たるのではないか。
あんの、野郎と呪うのが口笛。そして、音によって周囲に知られてしまい、呪い返しの報いをうけるのだとしたら?
ううむ、人を呪わば、穴二つなのではないか。どう歌われても、悩んでしまう。
ゴルゴーンの目を見ると、石になるという神話が、 今ではしばしば下ネタに使われるのだとか。 それっぽい画像見つけたので、ぺたり。 |
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