2016年10月24日月曜日

少年探偵団を電車で読む

ずっと以前の職場で、年配の上司が語っていた。

「高度経済成長期の後だったが、スポーツ新聞を電車の中で読んでると、見ず知らずの年上の人に怒られたもんだ」

次の駅で降ろされた挙句、(公共の場で、大の大人が野球や相撲、お馬さんの情報を貪り読むとは恥ずかしくないのか)という叱責であったという。

概して日本人のモラルや公共心の高さは、評価される。それこうした老紳士の叱責が原動力だったのかもしれない。

某日、筑摩の世界の名著でキルケゴールを安く見つけた。待ちきれず、電車の中で開く。

もともと高校生向けに編纂されたのか、このシリーズ。分かりやすいと定評だったらしいが、一向に頭に入ってこない。絶望が死に至るというオチは知っているが、全然内容が分からない。

電車を降りる間際に、本をチラチラ覗き込んでいたおっちゃんがいう。

「難しいのを読んでるな」

一瞬、厭味かと思った。顔を見ると感心した顔だった。余計にイラっとした。

某日、これまた安く買った乱歩の少年探偵団シリーズを車中でこっそり開く。小林少年が例によって潜入するシーンで盛り上がる。

目的地の駅で降りても、幸い、誰にも怒られなかった。

いや、読んでいるものに、おっぱいが印刷されていない限り、怒られないのではないか? いや、印刷されていても、怒られないのではないか。

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