2015年9月17日木曜日

古書の苦しみ

初版本を収集したり、せどりをするのとは少し訳が違う。

本を収集するが、基本的に読むことを目的にしている。

地方に出かけたときに、いいものが見つかったことはあまりなく、やはり都市部に出かけて古書店をめぐるのがいい。

たまに本のリサイクルのフランチャイズで、せどりの仕入れをしている人を見かけるが、なんとなく好きになれない。本が好きで購入するならともかく、転売目的で安く仕入れようということ自体、どこか不純であるような気がするのだ。

そうはいっておきながら、そうした店で、掘り出しものがあると嬉しいし、つい大人買いしてしまう。

源義経が大陸に渡り、チンギスハーンになったという、「義経=チンギスハーン説」を大正時代に最初に唱えたのが、小谷部全一郎。彼の日猶同祖論『日本人のルーツはユダヤ人だ』が缶コーヒーよりも、安く手に入ったときは、本当に嬉しかった。奇書珍本を入手できる。

こうしたリサイクルのフランチャイズの店長をしていたという人に話を聞いたことがある。

版元によって、そんなに個性はないが、横山光輝の三国志や、水滸伝のうち、初版の新書サイズだけは手に入りにくいという。

なぜか。

製本の糊が悪く、カバーをとって、背中以外の三方を削るが、そうした作業をする間にうっかり背中が割れてしまったりするぐらいだと。本としての性能が悪く、保存に不向きであるため、流通しないという。内容がレアというのとは、少し事情が異なるという。

なるほどねぇ。決して版元は大手ではないが、作品自体は有名である。はっきりいって、鉄人28号や忍者赤影を読んだ世代ではないが、三国志や水滸伝は知っている。

しかし、フランチャイズである。人気のある本をできるだけ仕入れ、利益を乗せて、早く棚を開けたいというのが、常識だそうだ。

当然、人気のないもの、変わった本は低価格になる。

そこが古書店と、決定的に違うところである。

とある古書店に入ったときのこと。

中村元監修の仏教語辞典を、店主がめくっているので、いくらかと尋ねたことがある。店主は顔をあげると、めくる手を止めた。

「面白いから、今読んでるところです」

商売人としては失格だが、本読みとしては見上げたものである。

二ヶ月後、店頭に並ぶ。金一万円の値札。読み飽きたものを、その値段で売るとは。商売人としても見上げたものである。

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