2018年7月14日土曜日

臆病者は壺を売られる

 職場の近くに海外留学を紹介するカウンターができた。

 その前を通り過ぎた時、若い男性二人の会話が聞こえた。

「壺を売りつけられるのではないか」

 いい。実にいい、臆病ぶりである。憶測と、貧相な想像力だけで世界の危機をいつも感じている臆病加減がすこぶるいい。

 彼らの頭のなかでは、常に陰謀と恐怖が渦巻いているのだ。

 オウムによるサリン事件が報道された時、阪神・淡路大震災で炊き出しの小学校に寝泊まりしていた。

 そこでさも、事情通の人が語っていた。

 テレビ放送で公共広告がやたら目立っている。

 震災によって、人々が動揺している。

 その感に、国家は支配体制を強化するために、公共広告を入れて、国民を都合よく洗脳しようとしていると。

 ほんとかなぁと思っていた。

 案の定、あとから違うことが分かった。

 震災の報道を行うにも、スポンサーが必要である。しかしスポンサーが作るCMはもちろん、商品を告知するのが目的である。当然、浮世離れした演出もある。楽しさを表現したものもある。

 そうしたものを放映していたら、この緊急時に何を気楽なことをしているのかと、顰蹙を買ってしまうことがある。

 だから、スポンサーの降板が相次いだし、名称を流すが、CMを流さないということも起こった。その合間をうめるための、放送局にとってフリー素材的なものが公共広告だったのだ。

 これは現に、のちの東日本大震災でも同じことが起こる。

 菅直人のボンクラさは到底、隠しおおせるものではなく、国家権力の求心力はだだ下がり。その間に挨拶しましょうという公共広告が結構な頻度で流れたのだ。ポポポ、ポーンのアレである。

 阪神・淡路大震災の時、村山内閣は長く続かなかったし、批判にさらされた。国が国民を洗脳しようとしているのなら、どう考えても大失敗である。

 なんとなく、したり顔で語る事情通。憶測で現象を付け足しているだけなのだ。何も分かってはいない。

 しかし、そういう人を見ると、たまらなく嬉しくなる。世界の真実を知ったふりで、まんまとテロリストの手先となって恐怖を煽るような輩は、こうした事情通なのだ。

 壺を売りつける側は誰を狙っているのか。その商品価値は恐怖や不安を和らげること。つまり怯えるものほど、格好の餌食なのだ。

 売る方も、売りつけられる方も、本体はただの臆病者。恐るに、強烈物足りない。

「早すぎた。腐ってやがる」の巨神カエルなんだとか。

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