カバンの中に、なんの経緯か、お菓子をいれることがある。
いただき物であったり、何かのついでに買ったものであったり。
カバンの中に、お菓子がある。この状態が実はなんとなく落ち着かない。カバンの中で、中身が溢れたりしないか、という心配はまるきりないのに。
昔、NHKで『シャーロック・ホームズの冒険』を放映していた。(ジェレミー・ブレッドが、原作についていたシドニー・パジェットの絵にそっくりな風貌であったため、未だに世界のシャーロキアンに絶大な評価を得ている)
なんの事件であったか、ホームズとワトソンが依頼人と共に、張り込みをするシーンがあった。依頼人が寒さを訴え、ワトソンが気を効かしていう。
「キャンディでも、どうです?」
それなら、おひとつと、依頼人が手を出しかけると、イラっとしたホームズがいう。
「ピクニックに来たのではないのだよ、ワトソン君」
露口茂の吹き替えの声が厳しく、ジェレミー・ブレッドの表情も次の瞬間、例によって無表情になる。
ごめんちゃい感丸出しで、包み紙をポッケにないないするワトソン。
そのシーンのせいだろうと、いつも思う。
社会人なのに、お菓子を手元に持っていると、ピクニックに来たのではないのだよと、露口茂の声で叱られるような気がする。
お菓子にまつわる、おかしな話。